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スーパー歌舞伎「ヤマトタケル」 [ふくもの論]

先日、四代目市川猿之助襲名披露の六月大歌舞伎に行ってきました!
夜の部の演目はスーパー歌舞伎「ヤマトタケル」。
ヤマトタケルといえば、古事記、日本書紀に登場する英雄です。
写真.JPG
上演開始後、しばらくは説明的な台詞に違和感も感じましたが、進むにつれてどんどん物語のなかに引き込まれていきました。
終了後、なかなか昂揚感が冷めず、さまざまな思いがわき上がりましたが、ここでは古事記との関わりで、印象に残った点を一つだけご紹介します。

古事記によると、ヤマトタケル(元の名はオウスノミコト)は、父である景行天皇に、兄のオオウスノミコトを朝食の席に呼ぶよう命じられます。ヤマトタケルは、兄を待ち構えてとらえると、なんと手足を折って、つつんで投げ捨ててしまいます。天皇は、皇子のそんな荒々しさを恐れ、クマソタケルの征伐を命じることになります。
このエピソードによくあらわれているように、ヤマトタケルは荒々しく力強い男性です。父である景行天皇も、身長が一丈二寸(古代は一尺18㎝、一丈は十尺、十寸が一尺・なので約183㎝)、膝下は四尺一寸(約73㎝)だったとあります。
今でこそ180㎝の男性は珍しくありませんが、古代はいまよりもずっと平均身長が低いので、180㎝もあれば巨人というイメージです(膝下70㎝超もビックリ)。
そんなことからも息子のヤマトタケルについても大きく力強いイメージがありました。

そのヤマトタケルが、クマソタケルを討ちにいくときに、女装をします。伊勢神宮の斎宮である叔母の衣装を身につけて、髪型も少女のように結って宴に入っていくと、クマソタケル兄弟は、その少女(ヤマトタケル)を気に入り、兄弟の間に座らせます。ヤマトタケルはそのときに隙を突いて剣を刺すことになります。

兄の手足を素手でへし折るような男性が、はたして少女に変装してばれないものだろうか。物語とはいえ、不思議だなぁと感じていました。

ちなみに、やはり同じ梅原猛原作の「ヤマトタケル」の漫画版である山岸涼子『ヤマトタケル』(角川書店)では、ヤマトタケルではなく、従者の少年タケヒコが女装をします。
映画『日本誕生』(東宝、1959年)では、ヤマトタケル役の三船敏郎が、そのまま女装し、激しいにらみをきかせて近づきます。かなり不自然な場面になっています。

猿之助版になると、それが、見事に一つの人物として統合されていて驚きました。
力強いヤマトタケル。女装をして男性を惑わすヤマトタケル。
この二つが矛盾せずに表現できるのは、歌舞伎という表現形態だからこそかもしれません。
ヤマトタケルは、歌舞伎にぴったりの素材だったことに気づかされました。

女装する英雄というと、ヤマトタケル以外にも、ギリシア神話のアキレウスや北欧神話のトールがいます。どちらもそれぞれの神話を代表するような英雄です。アキレウスはトロイア戦争に参加する前、宮殿で女性たちに混じって暮らし、見分けがつかないくらいに同化します。トールは、なんと花嫁衣装を着て巨人との結婚式に臨みます。

人類学では、成長する過程、つまり次のステップへと移行の途上の状態を、リミナリティといいます。
女装(性的倒錯)を経験するというのは、まさに男性とも女性ともつかない姿になることで、英雄が成長の過程にあることを意味するといえます。
オウスノミコトからヤマトタケルと名を変えるのもこの場面のあとです。「女装」はヤマトタケルが英雄になるために必要なプロセスかもしれません。
歌舞伎をみて、あらためて「英雄の女装」についても考えさせられました。

最後に、今回の「ヤマトタケル」では、女装をして踊りますが、それは天照大御神が閉じこもった天の岩戸の前で踊るアメノウズメを彷彿とさせるものでした。ぜひ猿之助のアメノウズメも見てみたいものです。

あまりに感動したので、来月も新橋演舞場、行ってきます!
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コメント 1

田中

話題のヤマトタケルですね。
やはり生で見るとすばらしいんですね。
私もぜひ見てみたいです。
by 田中 (2012-06-11 15:43) 

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